ある日、ルイス・バラガンの手がけた住宅の室内写真を眺めていると、アンティークの見事な収納棚が目にとまりました。彼の生み出す静穏な空間に馴染む素敵な調度品でしたが、少しばかり個性に欠けていると感じました。その原因が取っ手の造形によるものだと気付き、バラガンの空間に相応しい、より良い取っ手のデザインを考えてみようと思いました。生活の中で取っ手の形を認識する視点は二つあります。一つは離れた場所から眺める時、もう一つは直接触れる時です。ふたつの視点をそれぞれに満たす、美しいレリーフのような形がひらめきました。