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アルベルト / チェア / 330 × 385 × 790 , sh460
私の愛する彫刻家のひとり、アルベルト・ジャコメッティ。彼の晩年の作品の一つに「座る女性」と呼ばれるものがあります。彫刻には椅子がありません。あの細く繊細な女性のフレームにふさわしい椅子を、私は想像してみました。
ジャコメッティは人間の実存を見つめ続けた彫刻家です。彼は人生と仕事を通して、人間の存在自体を肯定し続けました。目の前の人物がいかなる信仰や思想を持つかに関わらず、いかなる運命を背負っているかに関わらず、ただそこに存在することに価値を見出したのです。私は彼の眼差しの中に、現代の椅子が担う普遍の役割を発見しました。詩人も政治家も農夫もヒッピーも、聖人であろうと罪人であろうと、誰もが椅子に座る権利をもちます。私たちの椅子が玉座である必要はありません。
数枚のドローイングを描き、それを構造に落とし込むことから始めましたが、ドローイングのムードを損なわないよう注意深く図面を引きました。結果は、慎ましくも不思議な佇まいの椅子でした。椅子が私にささやきました。あなたが誰であれ、時にはただ腰を下ろすことも必要です。
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